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リレーコラムRelay column

リレーコラム

春の光

今までの人生、後悔した事があるのではないでしょうか?日本に来て3年目になりました。もし2年前の私にこの質問をしたら、答えはきっと「一番後悔した事は日本に来たこと」。辛くてしょうがない。ふと家族にその話をしたいですが、心配させるかもしれません。中国の諺で「报喜不报忧」。(いい事ばかり言って悪い事を隠す)。ですから私はいつでも笑顔で家族にこう伝えます。「元気ですよ、安心してね。何年も家を離れているのでもう慣れています。」正直、家族に伝えたいし会えたいです。でもこうすると何も変わりません。

ある眠れない夜、父の言葉を思い出しました。「人は生きている内に沢山知識を吸収し、能力があればどこでも生きていける。」はい、そうです。私は自分に問い返します。「どうして今の私が逃げたいの?まだ努力が足りないのでは?どうして他の人が出来る事、私が出来ないの?」私の日本語の先生はどんな時も苦労をいとわずに来てくれます。実習指導員さんは理解できるまで根気よく指導してくれます。「容易に諦めますか?」一連の質問に対して自分と何度も何度も対話しました。このようにして少しずつ私の考えは変わってきました。すべての不幸は未来への踏み台に過ぎない。悪い時が過ぎれば良い時が来ます。そう思うようになってから一生懸命勉強して積雪がとけて、春が来ました。

春というと、殆ど桜を思い浮かべるかもしれません。4月、コロナの感染拡大で閉塞感に覆われる中、近くの公園では例年通りに桜が美しく咲きました。ぶらぶらしながら桜の木の下に座って、サクラソフトを食べていると、風に吹かれて舞った花びらが目の前をかすめました。夕日に照らされて感動的です。この景色は去年の京都旅行を思い出させました。
紅葉の美しい季節でした。仲良し4人組で旅行に挑戦しました。不安と期待に胸をふくらませ出発。私は旅行本とスマホとにらめっこです。最初の壁は、空港から京都へのJRチケットでした。券売機にお金を入れましたがチケットが出て来ません。困っている私達を見て若い男性が係員に連絡をしました。説明だけではなく彼は私達全員が無事にチケットを買い、乗り場へ行く所までを見届けました。六甲では1DAY券の使い方を案内係が丁寧に教えてくれました。地図に停留所や最終便に乗り遅れないように〇をつけてくれました。こちらが希望する以上の親切です。これら無数の親切の上で日本は成り立っていることに感動します。お陰で私達は憧れの京都の紅葉を満喫し、念願の神戸ビーフ、百万ドルの夜景を見られ、非常に充実した旅行となりました。ここでの生活は、私を後悔から喜びに変化させてくれました。私は自分の壁を乗り越え、旅行への挑戦もできました。身に染みる思いです。

そろそろ花見の時間も終わりです。桜の季節は新しい始まりを表します。努力は肥料。来年もその次もずっと満開でありますように。

(李 永慧/えひめファッション産業協同組合/株式会社ソーイング羽藤)

※2021年度、愛媛県外国人技能実習生受入組合協議会では、県内の技能実習生を対象とした日本語作文コンクールを実施しています。李 永慧さんの作品は優秀賞に選ばれたものです。
愛媛県中小企業団体中央会HP http://bp-ehime.or.jp/
なお、作品集は愛媛県国際交流協会でも閲覧することができます。

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