当協会では、平成18年度から、国際協力・国際交流の推進を目的とし、財団法人自治体国際化協会の補助事業(自治体国際協力促進事業[モデル事業])として、スリランカ民主社会主義共和国から農業省職員の研修生の受入(18〜19年にかけての1年間)、柑橘類の苗木の搬送及びその後の育成指導、通信機器整備、現地訪問、短期研修生の受入等を「えひめ・スリランカ農業技術研修事業」として実施しております。 今年度は、「愛媛農業担い手育成事業」という位置づけで、愛媛県果樹研究センターの研究員のほか、愛媛県立農業大学校生や青年農業後継者など、次世代を担う若者を愛媛県からスリランカへ派遣し、主要農産物である柑橘の栽培技術支援等を通して進行中の国際協力実践モデルを体験することで、地域で育まれた技術や人的資源が有益な国際貢献に繋がっていくこと、そのなかで自分たちが地域において果たせる役割とその価値について学んでもらうため、過年度に愛媛県から搬送した柑橘苗の生育状態や、スリランカ農業省職員及び現地農業従事者のスリランカの柑橘栽培復興に向けた取組について、10月7日から18日までの12日間に渡って視察しました。
10月7日は1日かけて松山からスリランカに移動し、明くる8日に、スリランカ農業省のマンコッテ農業局長に面会し、当該事業について意見交換を行いました。今回の視察結果をもとに、スリランカにおける柑橘復興計画をさらに進めたいとのことで、愛媛県と愛媛県国際交流協会からの協力支援に感謝の意を頂きました。 その後、およそ10日間かけて、過年度に愛媛県から搬送した柑橘苗が生育されている8圃場のうち、ガンナルワ、シタエリヤ、ラハンガラ、バンダラウェラ、モナラーガナ(マドラカティ)、ギランドゥルコッテ、ホラナの7圃場を順次視察しました。 どの圃場も過去に訪問したときよりもさらに整備されており、整枝や剪定など、愛媛県での研修の成果が実際の試験栽培の現場で活かされていました。ここから、愛媛県で研修を受けたレズリー研究員をはじめとしたスリランカ農業省職員の皆さんの、柑橘栽培復興に向けた熱意を感じました。またそれも、研修の時だけでなく、その後もバックアップしていただき、また今回の訪問においても現地において直接指導していただいた、愛媛県果樹研究センターの研究員の方々のご尽力のおかげだと思います。 さほど大きくないスリランカ(九州より大きく、北海道より小さい)ですが、標高差などにより、温度や降水量、風など、圃場はそれぞれ異なる環境にあります。一般的には熱帯性の高温多湿の気候ですが、シタ・エリヤ研究所のあるヌワラ・エリヤ地区(標高約1,890m)などの高地においては気候は冷涼です。そのため、柑橘苗の生育状況は、圃場や品種により違っており、また日本との気候の違いもあっていくつかの問題もありましたが、どの圃場においても柑橘苗は1本も枯れることなく生長していました。一方で、資金不足のため肥料の散布が充分でなく、そのことが苗木の生育に悪影響を及ぼしているなど、今後の課題も見つかりました。 いくつかの圃場では試験的に少しだけ実を成らせており、試食させてもらいました。もちろんまだまだ愛媛の柑橘には及びませんが、充分に美味しく、着実に成果が上がっていることが感じられ、数年後、本格的に収穫する時が楽しみになりました。 また、かつて愛媛県で研修を受けた職員の方たちが、帰国後、柑橘栽培復興に係わる重要なポジションに就かれており、我々の支援が、スリランカの柑橘栽培復興計画に貢献できていることが分かったことも大きな成果の一つでした。
圃場の視察の合間には、スリランカ農業省職員の皆さんの案内で、農業大学校の圃場や現地の果樹農家、紅茶工場などを視察しました。 愛媛県ではなかなか見られない南国の果物の栽培状況は興味深いものでしたが、なかでも驚いたのが、鳥獣害についてです。日本では鳥獣害といえば猪や猿などが思いつきますが、スリランカでは象による被害があるそうです。群れからはぐれた象は気が荒くなっていて、爆竹などを鳴らして追い払うしかないとのことでした。 また、愛媛県で短期研修を受けたヘマチャンドラ研究員の指導のもとで、スリランカ原種の柑橘であるビビレ・オレンジを栽培している農家では、年間約20万ルピーの売上があるとのことで、スリランカの国家公務員の月給が4万ルピーであることから考えても、スリランカにおける柑橘栽培の可能性を感じさせました。 また、紅茶はスリランカの代表的な特産品ですが、特に産地として有名なヌワラ・エリヤ地区などにおいては、文字通り見渡す限りの紅茶畑で、日本とは全く違うスケールの大きさとその風景の美しさに圧倒されました。
また、国際交流の一環として、ホラナ研究所の近くの初等学校などを訪問しました。スリランカの人たちにとって日本人や日本語は珍しく、みんな我々の自己紹介に興味津々で、たくさんの児童からノートなどに名前を書くよう求められました。その後、愛媛FCからいただいたボールで一緒にサッカーをしたり、折り紙を教えたりしました。スリランカで最も人気のあるスポーツはクリケットですが、ここ最近はサッカーも人気が出てきたそうで、みんなとても上手でした。折り紙は少し難しかったようでしたが、みんな熱心に取り組んでくれました。愛媛のみかんや今回の交流をテーマにした絵を描いて送ってくれるそうで、とても楽しみです。
スリランカは南部地域が貧しいそうで、そこに住む人々の所得向上のため、スリランカ農業省職員の方たちは柑橘栽培復興に熱心に取り組んでいます。視察の最後に、今回一緒に言ってもらった青年農業後継者の方が、レズリー研究員に、「自分たちは愛媛県南部の南予地方で柑橘栽培に従事しており、我々も厳しい状況にあるが、将来に向けてお互い協力し合ってがんばりましょう!」と言ってくれたことがとても印象的でした。 愛媛とスリランカが、民間レベルの、それも若い世代でも協力し合えるようになれば、今よりももっと具体的な、きめ細かい協力関係が築けるようになると思います。そうなれば、スリランカの柑橘栽培復興だけでなく、スリランカ特産の果樹等を研究することで、不況にあえぐ愛媛県の一次産業の活性化にも繋がっていくのではないでしょうか。
事務局 一色 大輔 |